【名探偵コナン版オリエント急行】黒鉄のミステリートレイン徹底比較

【名探偵コナン版オリエント急行】黒鉄のミステリートレイン徹底比較

みなさんは、『名探偵コナン』シリーズにアガサ・クリスティー原作『オリエント急行』をモチーフにした作品があるのをご存知ですか?それが『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』です。

この作品は、劇場版『名探偵コナン』シリーズ第26作目となる劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』に先駆けて劇場公開された作品で、同作品でもキーパーソンとなる灰原哀に焦点を当て、テレビアニメ『名探偵コナン』の「漆黒の特急シリーズ」を編集した総集編に新規カットを追加したものとなっています。

「ミステリートレイン」というタイトルから感じられるように、この作品には『オリエント急行』を感じさせる要素が随所に散りばめられています。

そこで今回は、名探偵コナン版『オリエント急行』と称される『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン』と実際の『オリエント急行』を徹底比較します。

名探偵コナン版オリエント急行『黒鉄のミステリートレイン』とは?

名探偵コナン版オリエント急行『黒鉄のミステリートレイン』とは?

まずは、『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』と『オリエント急行』の2つの作品を紹介します。どちらも「急行列車」を舞台としたミステリー作品で、その「列車」という密室が生み出す独特な雰囲気がとても魅力的です。

『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』の紹介

『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』は、劇場版『名探偵コナン』シリーズ第26作目となる劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』に先駆けて劇場公開された作品で、同作品でもキーパーソンとなる灰原哀(以下、灰原)に焦点を当て、テレビアニメ『名探偵コナン』の「漆黒の特急シリーズ」を編集した総集編に新規カットを追加したものとなっています。

この作品では、まず冒頭でコナンや少年探偵団と灰原との出会いや親交が深まったきっかけ、黒ずくめの組織との再会、そして本作の前日譚といった回想シーンが描かれ、その後、「漆黒の特急シリーズ」を編集した総集編が本編として描かれます。『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン』の構成は以下の通りです。

『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン』の構成

1. 回想

  • 第129話
  • 第130~131話
  • 第136~137話
  • 第176~178話 「黒の組織との再会」
  • 第230~231話「謎めいた乗客」
  • 第699~700話「灰原の秘密に迫る影」

2. 本編:「漆黒の特急シリーズ」

  • 第701話「漆黒の特急(ミステリートレイン)(発車)」
  • 第702話「漆黒の特急(ミステリートレイン)(隧道)」
  • 第703話「漆黒の特急(ミステリートレイン)(交差)」
  • 第704話「漆黒の特急(ミステリートレイン)(終点)」

3. 劇場予告:劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』

「漆黒の特急シリーズ」の物語は、鈴木財閥に招待されて最新鋭の豪華列車「ベルツリー急行」に乗車したコナンたちが、その列車で開催されたミステリーゲームの最中に起こった事案を解決するという内容です。また、コナンたちと黒ずくめの組織の灰原争奪戦も同時進行で繰り広げられ、片時も目が離せない展開となっています。

また、赤井秀一や安室透、怪盗キッドといった『名探偵コナン』シリーズでも屈指の人気を誇るキャラクターたちが集結するのも、この作品の魅力の1つです。

『オリエント急行』の紹介

『オリエント急行』は、アガサ・クリスティーが1934年に発表した長編推理小説で、名探偵エルキュール・ポアロがシリアでの仕事を終えてイギリスに帰るために乗車したイスタンブール発カレー行きの豪華寝台列車「オリエント急行」で起こった事案を解決するという物語です。

ポアロが乗車したオリエント急行には、さまざまな国籍や職業の人たちが乗り合わせ、その異国情緒溢れる雰囲気が「列車」という密室が生み出す雰囲気と相まって『オリエント急行』という作品をとても魅力的なものにしています。

『オリエント急行』と『黒鉄のミステリートレイン』を徹底比較!

『オリエント急行』と『黒鉄のミステリートレイン』を徹底比較!

『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』は、名探偵コナン版『オリエント急行』と称されるだけあって『オリエント急行』を感じさせる要素が随所に散りばめられています。その一方で、『オリエント急行』とは対照的な要素も随所に散りばめられています。今回は以下の5つの要素について解説します。

「オリエント急行」と「ベルツリー急行」

オリエント急行は、国際寝台車会社(ワゴン・リ社)が運行する豪華夜行列車で、石炭で湯を沸かして発生する蒸気の力を利用する蒸気機関車(SL)です。また、オリエント急行はフランス北部の港湾都市カレーとトルコ最大の都市イスタンブールを結ぶ路線であり、さまざまな国籍や職業、身分の乗客が乗り合わせ、異国情緒な雰囲気が漂っています。

オリエント急行の内装には、高級木材の寄木細工があしらわれ、まるで「アールデコの宝石箱」のようだったと言われています。また、客室のベッドにはシルクのシーツが敷かれ、バスルームの床には大理石が施されていたようです。他にも、客室には鏡台や照明、洗面所、エレガントな調度品なども備えられていたと言われています。このような豪華な内装から、オリエント急行は「西洋と東洋を繋いだ」と評されるほどさまざまな国の貴族や外交官、政治家、実業家、裕福な旅行者に愛されていたようです。

一方、ベルツリー急行は、鈴木財閥が総力を挙げて完成させた最新鋭の豪華列車で、外観はオリエント急行と同じ蒸気機関車となっています。また、一等車は鈴木財閥の鈴木次郎吉相談役の友人でオリエント急行の大ファンの資産家のリクエストを受けて作られており、内装もオリエント急行と非常によく似ています。

ただし、このベルツリー急行がオリエント急行と同じ蒸気機関車なのは見かけだけで、中身は最新鋭のディーゼル機関車(DL)です。また、オリエント急行はフランス・カレー - トルコ・イスタンブール間を何日もかけて走る寝台列車ですが、ベルツリー急行は東京-名古屋間をたった数時間で走る普通の観光列車のため、各客室は寝台車ではなく座席車となっています。

つまり、ベルツリー急行はオリエント急行をモチーフにしつつ現代の最新技術を駆使して作り上げられた、オリエント急行の雰囲気を楽しむための”体験型”豪華列車だということです。このベルツリー急行の異国情緒あふれる雰囲気と「密室」という舞台が、車内で繰り広げられる推理サスペンスや黒ずくめの組織との対決をより一掃盛り上げます。

列車に乗り合わせた乗客たち

上述したとおり、オリエント急行はフランス北部の港湾都市カレーとトルコ最大の都市イスタンブールを結ぶ路線であり、さまざまな国籍や職業、身分の乗客が乗り合わせ、異国情緒な雰囲気が漂っています。特に、オリエント急行は高級列車であり、さまざまな国の貴族や外交官、政治家、実業家、裕福な旅行者がよく利用しました。

『オリエント急行』では、国籍はアメリカやイギリス、ドイツ、フランス、ロシアといった計9か国から、職業は外交官や実業家、家庭教師、私立探偵、さらには大富豪や伯爵夫人まで、実にさまざまな国籍や職業、身分の乗客たちが乗り合わせました。しかも、今回は割愛しますが、彼らは実は共通の背景を持ち、共通の目的を持って集まった人たちだったのです。また、それぞれの登場人物が自分の素性を隠しながら演技をする必要があることから、映画やテレビドラマでは、多くの人気俳優を一同に集結させる「オールスターキャスト」という形がよく取られます。なお、オリエント急行に乗り合わせ乗客は以下の通りです。

オリエント急行に乗り合わせた乗客たち

  • エドワード・ヘンリー・マスターマン(イギリス人執事)
  • アントニオ・フォスカレリ(アメリカ帰化イタリア人セールスマン)
  • ヘクター・マックイーン(アメリカ人秘書)
  • ヒルデガルデ・シュミット(ドイツ人女中)
  • グレタ・オールソン(スウェーデン人婦人)
  • メアリー・デブナム(イギリス人家庭教師)
  • エルキュール・ポアロ(ベルギー人私立探偵)
  • サミュエル・エドワード・ラチェット(アメリカ人実業家)
  • ハバード夫人(アメリカ人婦人)
  • アンドレニ伯爵夫人(ハンガリー人伯爵夫人)
  • アンドレニ公爵(ハンガリー人外交官)
  • ドラゴミロフ公爵夫人(フランス国籍ロシア人大富豪)
  • アーバスノット大佐(イギリス人大佐)
  • サイラス・ハードマン(アメリカ人私立探偵)
  • ピエール・ポール・ミシェル(フランス人車掌)

一方、国籍は限られるものの、ベルツリー急行にもコナンたちをはじめさまざまな背景を持つ乗客たちが乗り合わせました。特に、「漆黒の特急シリーズ」はこれまでに登場したキャラクターが総集結したオールスター作品の1つだけあって、その登場人物の多さは『名探偵コナン』シリーズでも屈指です(現時点で「紅の修学旅行編」に次いで2番目に多い)。また、彼らは単なるミステリー通というだけでなく、一等車を発案した資産家と何かしらの繋がりを持っていたり、とある人物を目的としていたりと、共通の背景や目的を持って集まった人たちだったのです。なお、ベルツリー急行に乗り合わせた乗客は以下の通りです。

ベルツリー急行に乗り合わせた乗客たち

  • 江戸川コナン(帝丹小学校1年生)
  • 毛利蘭(帝丹高校2年生)
  • 毛利小五郎(私立探偵)
  • 阿笠博士(科学者)
  • 灰原哀(帝丹小学校1年生)
  • 吉田歩美(帝丹小学校1年生)
  • 小嶋元太(帝丹小学校1年生)
  • 円谷光彦(帝丹小学校1年生)
  • 工藤有希子(元女優)
  • 鈴木園子(帝丹高校2年生)
  • 沖矢昴(東都大学大学院生)
  • 世良真純(帝丹高校2年生)
  • 安室透(喫茶店アルバイト、私立探偵)
  • 安東諭(美術品鑑定士)
  • 能登泰策(元自衛官で資産家の剣友)
  • 出波茉莉(資産家のの孫の婚約者)
  • 小蓑夏江(資産家の伯母)
  • 住友昼花(小蓑のメイド)
  • 室橋悦人
  • *ベルモット(黒ずくめの組織、映画女優)
  • *赤井秀一(FBI捜査官)
  • *怪盗キッド(怪盗)

*は劇中で変装している

このように、ベルツリー急行に乗り合わせた乗客はオリエント急行に乗り合わせた乗客に比べて国籍は限られるものの、職業や年齢はより幅広いことが分かります。また、一見偶然乗り合わせたように見えて実は共通の背景や目的を持って集まった人たちだったという点や、探偵が犯人にとって想定外の乗客として乗り合わせたという点でも両作品は非常によく似ています。

「名探偵ポアロ」と「名探偵毛利小五郎」

エルキュール・ポアロはベルギー出身の元警察官で、第一次世界大戦後にイギリスに移住し、私立探偵として活動します。ポアロは、卵型の頭とぴんとはね上がった大きな口髭が特徴的な小男で、三つ揃えに蝶ネクタイと山高帽を身に付けています。また、彼は自らを世界最高の探偵であると称するほど自信家ですが、女性に優しく、身なりや整理整頓に気を配り、非常に紳士的な性格をしています。

一方、毛利小五郎(通称「眠りの小五郎」)も元警視庁捜査一課の刑事で、現在は毛利探偵事務所を開業し、知らぬ間にコナンの力を借りながら同じ私立探偵として活動しています。小五郎はポアロとは違い、オールバックにチョビ髭が特徴的なスタイルの良い外見をしていますが、「漆黒の特急シリーズ」ではポアロを意識して彼と同じぴんとはね上がった大きな口髭をしています。

また、劇中では小五郎が「ポアロ」や『オリエント急行』を意識したセリフを言う場面が多く見られ、自分のことを「ポアロ」をもじった「ポア郎」と呼んだり、ベルツリー急行内で起こった事案を『オリエント急行』と関連付けて推理したりすることが度々あります。ちなみに、劇中では世良も小五郎を「ポアロ(おっ)さん」と呼んで皮肉ったり暗に子馬鹿にしたりしています。

ただし、小五郎が名探偵として知られているのはコナンのおかげによるものが大きく、女性には優しいですが鼻の下を頻繁に伸ばしており、酒やタバコ、ギャンブルにはまるなど、生活のだらしなさも目立ちます。たまに頼れる一面を見せることもありますが、小五郎は紳士なポアロとは違い、良くも悪くも人間味にあふれた人物だと言えます。

「プロファイリング」と「アブダクション」

ポアロは主に「プロファイリング(profiling)」に近い推理法を用いて事案を解決します。プロファイリングとは、現場に残された状況から統計的なデータや行動心理学をもとに犯人像を推理するというもので、FBI(連邦捜査局)もこの推理法をよく用います。ポアロはこのプロファイリングに近い推理法を用いており、容疑者たちとの尋問や何気ない会話から勘や経験、ひらめきをもとに行動や思考を分析し、犯人像を推理しています。ポアロはシャーロック・ホームズのような地道に証拠を集めるやり方を「猟犬じゃあるまいし」と否定していますが、実際には自分の推理を裏付ける根拠もしっかりと集めた上で犯人を暴き出しています。

一方、コナンは主に「アブダクション(abduction)」という推理法を用いて事案を解決します。アブダクションとは、できるだけ多くの証拠を集め、その証拠をもとに仮説を立てて推理をするというもので、多くの警察や探偵もこの推理法をよく用います。この点で、『名探偵ポアロ』シリーズと『名探偵コナン』シリーズ、つまりは『オリエント急行』と『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』では事案解決へのアプローチが異なると言えます。

まとめ

いかがでしたか?『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』は、名探偵コナン版『オリエント急行』と称されるだけあって、『オリエント急行』を感じさせる要素を随所に散りばめつつ、『名探偵コナン』シリーズだからこその魅力もあるとても味わい深い作品となっています。『オリエント急行』がお好きな方はぜひ『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』を、『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』が面白かったという方はぜひ『オリエント急行』をご覧ください。

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